昔、東京の中野にお坊さんがいました。お坊さんは修行をしていましたが、周りに人がいないのでさびしく感じていました。
ある日、お坊さんが野原で石の仏をつくっていると、キツネが来ました。キツネはしばらくお坊さんを見てから帰っていきました。
そのあと、キツネはまた来ました。お坊さんはキツネに柿をあげました。キツネは食べてから帰っていきました。
それから、キツネは毎日来るようになりました。お坊さんは自分の食べ物を分けてあげました。キツネは昼はいつもお坊さんのそばにいて、夕方になると帰っていきました。
ある秋の日、お坊さんは用事があって町に行きました。帰ると、家に火がついていて、キツネが待っていました。その日、キツネはお坊さんの家に泊まりました。
雪が降る日、キツネが「お坊さん、この袋に米と小豆が入っているから、粥を作ってください。寒いから粥を食べて温まりましょう」と言いました。
お坊さんとキツネは仲良く小豆粥を食べました。その夜、キツネは「お坊さんに恩返しがしたい」と言いました。お坊さんは「火事にあわないこと、水が夏に冷たく冬に暖かければいい」と言いました。
そのときから中野の水は夏冷たく、冬暖かくなって、火事もあまり起こらなくなりました。