昔、岩手県の北上川の上流に光勝寺というお寺がありました。立派な和尚が住んでいました。ある年の春、おさとという子どもが母親と山にワラビをとりに行きました。おさとは、山の中で母親とはぐれてしまいました。おさとは1人で泣いていました。そのとき、若い男が声をかけてきて「母親のところへ連れて行ってあげる」と言いました。2人は仲よく野原を歩いて、母親の近くまで来ました。男は「もう少しだけ一緒にいてくれないか」と言いました。男が「なんて可愛いんだろう」と言ったとき、おさとは大きな声で叫びました。男は、おさとを飲み込んでしまいました。男は沼に住む大蛇で、蛇の姿に変わりました。母親が来たとき、蛇は林の中に逃げていきました。和尚は、祈り続けました。大蛇は苦しみながら、沼から逃げて北上川を流されていきました。黒岩の里まで来ると、体が石になりました。今でも北上川に、この石は残っているそうです。