昔、山形県の庄内に行く途中の若い侍がいました。山を越えて川を下りていると、美しい沼が見えました。侍は休みながら、笛を吹き始めました。笛を吹き終わると、きれいな女の人がいました。女の人は足だけを水に入れて、沼の上に立っていました。女の人は「もう少し笛を吹いてください」と言いました。侍は怖くなって「帰りにまた笛を吹くから」と言って、急いで出かけました。侍は用事が終わって、船に乗って帰りました。船は順調に進んでいましたが、ある場所で止まってしまいました。船を運転している人は「誰かが川に選ばれているので、船が進みません。大切なものを川に投げてください」と言いました。侍が笛を川に投げると、笛は立って船のまわりを回り始めました。そして、侍の前で止まりました。侍は船を降りました。侍は川に沈まないで、足だけを水に入れて立つことができました。侍は少し悲しそうな顔をして、沼のほうへ歩いて行きました。船は進み始めました。それから、月のきれいな夜になると、沼の底から悲しい笛の音が聞こえるようになりました。沼は「笛吹沼」と呼ばれるようになりました。