「小学館」と「光文社」フリーランス新法違反で公取委が勧告
2025-06-17 08:23:43

フリーランスで働く人が安心して働ける環境を作るため、去年11月、新たな法律が施行され、業務を委託した事業者に対して書面などで報酬額や支払い期日といった取り引き条件を直ちに明示することが義務づけられたほか、業務委託の期間が1か月以上の場合は通常よりも報酬を著しく低くする「買いたたき」などの行為が禁止されました。
公正取引委員会によりますと、「小学館」は、去年12月の1か月間、月刊誌や週刊誌の原稿の作成や写真撮影を委託しているフリーランスのライターやカメラマンなど191の事業者に対し、報酬の額などを書面やメールで明示しませんでした。
また、「光文社」もことし2月までの4か月間、フリーランスの31の事業者に対し、報酬の額などを明示しなかったということです。
公正取引委員会は2社が新たな法律に違反したとして、再発防止や内部調査を求める勧告を行いました。
法律の施行後、勧告が出されるのは初めてです。
また、今回、支払い期日が定められていなかったため原稿などの成果物を受け取った日が期日となり、2社とも期日までに報酬を支払わなかった違反も認定されました。
小学館「全社一丸となって法令順守を徹底する」
「小学館」は「勧告を重く受け止めるとともに皆様にご迷惑、ご心配をおかけする事態となりましたことを深くおわび申し上げます。今後は、社内に特別対策委員会を設置し、調査を行い、対策を講じてまいります。同様の問題が発生することのないよう、勧告の内容を役員や従業員に周知徹底します。また、あらためてすべての部署を対象にしたフリーランス法に関する研修の実施、業務委託をする際の発注手順の検証、支払い状況のモニタリング体制の強化などを推進し、全社一丸となって法令順守を徹底してまいります」とコメントしています。
光文社「法令順守を徹底する」
「光文社」は16日、緊急の社内研修を実施したとしたうえで「多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くおわび申し上げます。長年の商慣習において、電話などでの口頭による発注や新法が示す法令期日内の支払いにずれが生じていました。取引条件などを明示した共通発注書による業務委託の徹底と、支払い管理体制の再構築に全社をあげて取り組み、社内手続きや業務遂行状況をモニタリングして、法令順守を徹底してまいります」とコメントしています。
専門家「業界全体に適正なルール広げて」
労働法が専門で、フリーランスの人たちが直面する問題に詳しい早稲田大学法学部の水町勇一郎教授は「業界の体質として、大企業であってもきちんと法令にのっとった取り扱いをしていないところもある。そういう業界の体質をただすというなかで、まず公正取引委員会が大企業に勧告したことは重要なステップになると思う。今回の勧告は、フリーランスについての新しい法律を守らせるためにとても大切な第一歩だと思う」と指摘していました。
その上で、「フリーランスの人にとっては報酬が支払われるとしても、その期日がわからなかったり期日が守られなかったりすることが大きな問題の一つになっている。企業には、きちんと法令を順守してフリーランスの人が気持ちよく働き、取り引きができる環境を作っていくということがまず課されていると思う。大企業も含めて力の強いところからきちんとルールを守って、業界全体に適正なルールを広げていってもらうということが大切だ」と話していました。
フリーランス新法とは
去年11月に施行された法律では、フリーランスに業務を委託した企業などの事業者に対して、書面などで報酬額や支払い期日などの取り引き条件を直ちに明示することが義務づけられています。
その上で、発注した物品を受け取った日や発注した内容の仕事が終わった日から60日以内のできるだけ早い日に、報酬の支払期日を定めて支払わなくてはいけません。
なお、支払期日を定めなかった場合は発注した物品を受け取った日や発注した内容の仕事を終わった日が支払期日となります。
また、業務委託の期間が1か月以上の場合は、通常よりも報酬を著しく低くする「買いたたき」や、あらかじめ定めた報酬の減額などを禁止しています。
業務委託の期間が6か月以上の場合は、フリーランスからの申し出に応じて、育児や介護と業務を両立できるよう配慮することが義務づけられています。
そして、ハラスメントの相談や苦情に対応するための体制の整備が義務づけられ、相談したことを理由とした契約の解除など不利益な取り扱いを禁じています。
労基署に新たな相談窓口
新しい法律の施行にあわせて全国の労働基準監督署に新たな相談窓口が設けられました。
相談の対象は、フリーランスとして事業者と業務委託の契約を結んだものの、勤務の時間や場所、仕事の進め方などを具体的に指示され、実態は雇用された労働者と変わらない働き方をする人です。
厚生労働省によりますと、こうした人たちは労働基準法などに基づく保護が受けられず、長時間労働や過重労働、残業代の未払いなどが問題となっているケースがあるということです。
そこで、労働基準監督署では、窓口を訪れた相談者が「労働者」にあたるかどうか判断し、法律違反が疑われる場合は、発注側の事業者を指導するということです。